企業の中長期的な成長のためには、営業担当者だけではなく、営業部門全体の営業力強化が必要です。しかし、営業担当者や管理者の個人的な経験に頼った強化戦略では、営業力の底上げにはつながりません。
そこで本記事では、営業力の強化に欠かせない7つの施策について、詳しく解説していきます。営業力の強化に役立つITツールもご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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営業力とは、営業プロセスに沿った営業活動を行う能力や、顧客との交渉、受注獲得などの総合的な能力を指します。
コミュニケーションスキルに長けているだけでは、営業力が高いとは言えません。営業力を強化するためには、多角的な分析をしたうえでの底上げを検討する必要があります。
営業力を多角的な分析の前に、営業力を構成するさまざまな要素を確認しておくことも大切です。主な構成要素を詳しく見ていきましょう。
自社製品に関する知識は営業の基本ですが、営業力のある担当者は自社製品の知識だけではなく、競合他社の商品やサービスの内容についても把握しています。
自社製品に関する知識しか持っていない営業担当者は提案内容が限定的になり、顧客の興味と感心を引き出すことができません。比較対象となる他社製品を挙げながら自社製品のメリットを伝えてこそ、顧客は具体的なイメージを掴めるのです。顧客の状況に応じた柔軟な提案をするためにも、自社・他社を問わず商品に対する幅広い知識は欠かせません。
業界全体の知識を得ておくことも重要です。近年ではニーズが多様化しているため、業界内の事情や業界特有の問題に関する最新の知識は必須と言えます。
自社製品のメリットをアピールするだけで成約に結びつけるのは困難ですが、業界に関する知識の幅が広ければ、顧客の悩みや課題に対する多彩な解決方法を提示でき、理解を得られやすくなります。
商品や業界に関する豊富な知識があっても、優れたトーク力がなければ顧客に正確な情報を伝えることができません。なお、「トーク力」と「饒舌」は全く違います。営業では多弁よりも、顧客が理解しやすく興味が湧くような話し方が求められるのです。
会話の主体は自分ではなく顧客になるため、難解な専門用語をわかりやすい言葉に変えたり、曖昧な表現を使わずに説明したりするなどの配慮も必要でしょう。具体例を挙げながら説明するなどの工夫も求められます。
営業の現場では、トーク力よりもヒアリング能力の方が重要とも言われます。なお、ヒアリング能力には相手の話を聞くだけではなく、顧客の話を親身になって聞くことで、課題や潜在ニーズを引き出す力も含まれます。顧客の話を聞きながら業界事情を補助的に説明すれば、より顧客の同意を得やすくなるでしょう。
状況が変化しやすい営業現場では、臨機応変に対応できる予測力も必要です。予測力の高い営業担当者は、顧客の課題やニーズを先回りして予測するだけではなく、市場や競合他社の動向も確認しながら仮説へと導き、的確な営業活動を行います。
逆に、予測力に乏しい営業担当者は現場の状況に素早く対応できないため、成約の機会損失や顧客からの信頼失墜といった大きなダメージを受ける可能性が高まります。
顧客が求めているのは、自社の課題解決に役立つ商品やサービスの導入です。営業担当者の意向だけで営業活動を行っても受け入れてはもらえません。売り上げが低迷すると、自社製品を押し付けるような営業に走りがちですが、このような行為は顧客の抵抗感を高めるだけです。
営業力を強化するためには、売上向上ではなく、「顧客の課題解決」を目的にしてみましょう。顧客の課題を把握したうえで、解決方法を模索しながら営業活動を続けていけば、自ずと結果はついてくるはずです。
マネジメント力が求められるのは、管理者だけではありません。営業担当者も自分の活動を管理する能力が必要です。たとえば、営業活動前にプランを立案したり、活動後のフォローを進めたりする際には、マネジメント力が役立ちます。最適なタイミングで効率的な営業活動を行えなければ、成約数の増加やリピーターの獲得は難しくなるでしょう。
一般的な営業フローは下記となります。
そこで、各フローで求められる営業力を詳しく見ていきましょう。
見込み顧客へのアプローチで重要になるのは、臨機応変に対応できる予測力と行動力でしょう。見込顧客との連絡手段としては電話やメール、DMなどが考えられますが、営業力がある担当者は、顧客が普段から使っている手段を予測してスムーズなアプローチを実現します。逆に、予測力のない担当者は、自分が主に利用している連絡手段を使うため、機会損失を招きやすくなるのです。
顧客から問い合わせがあった場合と、新規顧客開拓を行う際のアプローチ方法も異なります。顧客からの問い合わせが自社製品の詳細に関する内容なのか、すでに購入を検討している段階なのかによっても方法は変わるでしょう。新規顧客開拓の飛び込み営業で反応が得られなかった場合は、相手の状況に応じてその後の連絡方法を電話かメールに変えていかなれければいけません。
このように、営業の現場で起こり得るさまざまな状況に対して柔軟に対応できる予測力と行動力は、営業力の強化に大きな影響を与えます。
初回の商談では、顧客が抱えている悩みや課題を丁寧に聞きながら、信頼関係を構築していくヒアリング能力が求められます。最初から自社製品を提案するのはNGです。
まずは顧客に貢献したいという姿勢を見せたうえで、顧客の潜在ニーズまで引き出すようにしましょう。そのうえで、自社製品が顧客の課題をどのように解決するかについて提案していきます。
クロージングのタイミングに正解はないので、営業担当者の決断力が成約率を大きく左右します。顧客が契約を決断していなくても、前向きな流れで進んでいるなら、その場を締めるケースもあるでしょう。
しかし、場を締めたためにチャンスを逃す可能性も否定できません。優れた決断力を身に着けるためには、可視化された情報から多くの事例を学べるようにしたうえで、全営業担当者の営業力が高度なレベルで標準化されるようにする必要があります。
ビジネスチャンスを広げるためのアフターフォローも重要です。基本的なサポートだけではなく、問い合わせがあった際に素早く対応できる能力も求められます。
丁寧なフォローとレスポンスの早さは中長期的な信頼関係の構築に結びつき、リピート率の向上やアップセルへとつながります。
ここからは、営業力を強化するための施策を7つご紹介していきます。
それぞれ詳しく見ていきましょう。
まずは、訪問件数や受注件数などの定量的データを分析して、自社の現状と課題を明確にしましょう。営業担当者に対して適切な指導を行うためには、定量的データの分析によってボトルネックになっている箇所を特定することが重要です。
なお、営業プロセスの可視化には、主に次のようなメリットがあります。
可視化によって、顧客情報や案件情報、各営業担当者のアクションが明確になるだけではなく、蓄積された各情報を企業の資産として活用できるようになります。営業担当者の異動や退職に伴う引継ぎもスムーズになるでしょう。
可視化されたプロセスが企業の資産として蓄積されれば、新たに配属された人材の育成を効率化できます。すでに指導すべき内容が固まっていれば、新人育成プログラムの作成などに発生する費用を最小限にすることも可能です。指導者によって内容が変わると理解が進まず、営業部署全体の統一感が失われる恐れがあります。
営業プロセスを可視化は、ノウハウの再現性も高めます。営業力を向上させるためには成績優秀な営業担当者の手法共有が欠かせませんが、従来の方法では活動内容が属人化するため、すべての営業担当者が同様の成績を残すのは不可能です。しかし、可視化によって有用なノウハウを細分化すれば、優れた手法の再現性が大幅に高まります。
ベストプラクティスを共有すれば、成功パターンを多くの営業担当者が実践できるようになります。ネット環境が発達して価値観が多様化している近年では、各人の勘や経験に頼った営業方法が通用しなくなりつつあります。このような状況で全体的な営業力を高めるためには、営業業務の属人化解消は必須です。
ボトルネックとなっている箇所や成功パターンを共有したら、管理者から各営業担当者に具体的な指導を行っていきます。もっとも効果的な方法は定期ミーティングですが、営業担当者によって指導するべき内容は異なるため、必ず1対1でのミーティングを行うようにしましょう。
ミーティングの頻度も、各営業担当者の実力や課題に応じて変えていきます。営業予算をクリアしている営業担当者なら月に1度程度でも構いませんが、新人の場合は毎週ミーティングを実施してもいいでしょう。
なお、ミーティングの目的は、データに基づいた短所の改善なので、管理者の感覚で指導してはいけません。指導のすべてを管理者に依存すると、組織全体の営業力強化につながらないので注意が必要です。
営業部署内での情報共有とプロセスの可視化が進んだら、他部署との連携も強めていきます。とくに重要なのは、マーケティング部門との連携強化です。
営業が商談で伝えている内容とWebページの内容に違いがあれば、いずれは大きな混乱が生じます。このような問題を避けるためにも、コンテンツの作成段階から営業部が参加してメッセージに一貫性を持たせましょう。
マーケティング部門が主導するメッセージには、ブランド定義やペルソナ設定、コンテンツ作成といった独自の戦略も含まれます。しかし、自社製品に関する問い合わせの内容や、製品が購入される理由、成約しなかった理由などを詳しく知っているのは現場の営業担当者です。そのため、制作の段階から営業部のインプットを取り入れながら、営業活動の全プロセスに寄与するコンテンツを作成していかなければいけません。
近年ではサブスクリプションモデルが普及しているため、従来のように「売ったら終わり」という営業スタイルでは、中長期的な成長が難しくなってきました。今後は、顧客が課題を解決するまでサポートすることを前提とした、手厚いアフターフォロー体制が必須となるでしょう。
そのため、営業部門は自社製品の知識だけではなく、成約後に顧客満足度を高める方法も熟知しておかなければいけません。営業部門だけで対応するのが難しい場合は、マーケティングからカスタマーサポートまでを連携させた全社的な体制で臨みましょう。なお、このような営業力の強化・改善のための総括的な取り組みを「セールス・イネーブルメント」と呼びます。
部署内での情報共有や業務効率化に役立つ代表的なITツールがSFA(営業支援システム)です。
SFAには、営業力強化に役立つ次のような機能が搭載されています。
会社名や所在地、電話番号といった基本情報だけではなく、顧客との接触履歴や名刺なども一括管理できる機能です。スマホやタブレットで操作できるSFAを導入すれば、移動時間の効率的に活用できるようになり、残業の削減にも役立ちます。
案件の進捗状況や受注確率、受注予定日などを管理できます。管理者と営業担当者の間で案件の情報を共有できるため、フェーズごとの指示や最適な営業活動の選択がしやすくなります。
過去の商談履歴や商談時間、提案金額、アクションの予定などを管理できる機能です。進捗状況を容易に把握できるため、案件の取りこぼしを防ぐことができます。
SFAの普及率は年々高まっていますが、導入コストを回収できない企業も少なくありません。自社の営業力強化に見合った機能と価格のSFAを選択しなければ、トータルでマイナスになる可能性さえあるのです。
SFAの価格はさまざまですが、導入と運用に百万単位の額が必要になるツールもあります。複雑なシステムは、使いこなすまでの労力と教育コストも勘案しなければいけません。
投資金額を無駄にしないためにも、SFAの導入前に課題を明確にしたうえで、SFAを活用した営業プロセスの再設計や営業施策を検討してください。営業力を強化するための課題を解決できてこそ、導入コストを上回るメリットが得られるということを忘れないようにしましょう。
SlimTime社の「Sugar Spot」は、リーズナブルな価格で営業力強化に欠かせない機能を搭載したSFAです。共有された顧客情報は出先からでもモバイルで簡単に確認できるため、情報の伝達ミスや把握ミスを未然に防げます。
案件の進捗状況確認も容易なので、機会損失を防ぎながら、業務の効率化を実現したいという企業にも最適でしょう。コストの回収を気にする必要がない1ユーザー月額1,500円というリーズナブルな価格も魅力です。
営業力を強化する方法はさまざまですが、抱えている課題に関わらず、営業活動の可視化と各種情報を共有することが何よりも重要になります。
人的リソースに限りがある企業は、SFAを導入して、営業力強化と業務効率化を両立させるという方法がもっとも有効です。この機会にSFAを活用して、組織全体の体制改革と営業力強化に着手してみてはいかがでしょうか。
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