SFA(Sales Force Automation)は営業活動を効率化する優れたツールですが、運用の定着化が進まず導入に失敗するケースも少なくありません。導入目的や活用方法、ツールの選び方を誤ると、コストだけが無駄になる恐れもあるので注意が必要です。

導入に失敗する原因はほぼ決まっているので、ツール導入前に確認しておくと運用が軌道に乗りやすくなります。そこで今回は、SFA導入に失敗する主なケースと改善策について詳しく解説していきます。おすすめのSFAツールも紹介しますので、ぜひ参考にしてください。


SFAの導入で課題は解決するのか?

SFAの導入目的として挙げられるのは、主に次の5つです。

  1. 業務効率化
  2. 顧客情報の共有
  3. データ分析による業績向上
  4. パーソナライズされた提案
  5. スキルバランスの標準化

営業担当者が個別に顧客情報を抱える従来の営業スタイルでは、担当者の転職や退職によって顧客顧報が流動的となるため、各種情報が企業の資産にならないという課題がありました。このような情報のブラックボックス化と、業務引継ぎに関する諸問題を解決するツールとして開発されたのがSFAです。


当初は顧客情報を記録するだけのシンプルなツールでしたが、顧客情報の共有が実現して流動化は解消されました。近年では業務の効率向上に比重を置いたSFAも多く、豊富な機能と優れた操作性で、営業活動における多くの問題解消に役立てられています。ただし、SFAを導入すれば必ず課題が解決するというわけではありません。

SFA導入に失敗する時期は決まっている

基本的に導入が失敗する時期はある程度決まっています。導入に失敗する時期・営業力・導入期間の関係は下図のとおりです。

導入に失敗する時期・営業力・導入期間の関係

それぞれの問題点を見ていきましょう。

導入直後から発生する問題です。SFAの導入が定型業務の負荷軽減につながると説明しても、「入力作業そのものが無意味な定型業務」と捉えられてしまうことによって起こります。

日々の入力が定着しても、蓄積されたデータを活用できなければ、業績の向上には結びつきません。人材不足や業務フローに難があると生じます。

課題を解決できる人材や資金不足が主な要因ですが、もっとも大きな問題は「業務フローが確立できていない」という点です。


起こりがちな上記の失敗を防ぐためにも、具体的な失敗例と導入を成功に導く方法を確認しておきましょう。

SFA導入時の失敗例と解決方法

ここからは、SFA導入の主な失敗例を詳しく解説していきます。

入力業務が煩雑すぎる

SFAの導入が失敗する例としてもっとも多いのは「操作の複雑さ」でしょう。多くの情報を入力できるSFAは正確な顧客管理や案件管理に役立ちますが、操作が煩雑化するため、営業担当者に敬遠されてしまいます。


SFAは顧客情報の管理だけではなく、案件や商談管理、売上予測、予定管理など、さまざまな機能を備えていますが、管理対象が増えるほど日々の入力も煩雑になります。日々の入力を義務化するという方法もありますが、営業担当者の負荷増大とモチベーションの低下につながるので得策とは言えません。


営業担当者には売上ノルマの達成という大きな使命があります。この命題がモチベーションの維持につながっているケースも多いでしょう。ノルマ達成の邪魔になるツールを次第に利用しなくなるのは、ある意味当然とも言えます。


そこで重要になってくるのが「入力の仕組み化」です。

     など

上記のような仕組みを整え、営業担当者の労力を削減できるように準備をしたうえで導入すれば、利用率の低下を防ぐこともできます。

利用目的が共有されていない

SFAの導入目的を明確にして、営業部内で共有することも大切です。目的が共有されていないと、営業担当者が「入力に手間がかかるだけで効果が感じられない」という不満を抱く可能性があります。導入目的を明確にしておけば、SFAを選ぶときの機能やスペックの比較もしやすくなるでしょう。


注意したいのは「SFAの導入=目的」とならないようにすることです。SFAはあくまでも売上拡大などを実現する「手段」であって「目的」ではありません。

SFA導入は売上を上げる手段であって目的ではない

なお、管理者視点だけで導入すると営業担当者の反発を招き、定着しない可能性が高まります。営業担当者は基本的に管理されるのを嫌うため、SFAの導入目的を正しく伝えないと、「自分たちを管理するために導入する」と誤解される恐れがあるのです。


このような問題を避けるためにも、SFA導入に際して、営業担当者に最低でも次の2つを伝えましょう。

  1. 業績向上のために顧客や商談の管理が必要になる
  2. 従来の営業スタイルは通用しなくなっている

営業担当者に納得してもらうために、具体的なデータを提示して説明するといいでしょう。SFAの導入そのものが目的になっている企業は、上記の2項目を説明できません。導入目的を再確認するためにも、導入前に説明する機会を設けたいところです。

中長期的な視点で導入していない

SFAを利用する営業担当者のモチベーションとリテラシーには個人差があります。そのため、導入前後のレクチャーと短期間の試用で全営業担当者に操作方法を熟知させるのはほぼ不可能と言っていいでしょう。


導入後の利用を定着させるためには、事業所や部門単位で利用率を計測し、状況を把握しながら中長期的な視点で適切なフォローを継続していく必要があります。

人材が不足している

SFAに蓄積された情報は、多角的なデータ分析によって顧客インサイトの取得や顧客ニーズの把握につながります。しかし、適切なデータ分析ができる人材を確保できない企業は、SFAを導入しても顧客情報の管理と共有だけに終始するため、データの活用ができません。


SFAはグループウェアなどの情報系システムよりも扱いが難しいITツールですが、管理者のITリテラシーは企業によって異なります。とくに、多機能で高度なSFAの運用定着を目指す場合は、自社で抱えている人材のITリテラシーを事前にしっかりと把握しておくことが大切です。

SFA導入で失敗しないためのポイント

ここからは、SFA導入で失敗しないためのポイントをご紹介していきます。


それぞれ詳しく見ていきましょう。

SFAの導入目的を現場に落とし込む

勤怠管理が導入の主目的であるような伝え方をすると、営業担当者からの反発を招くだけではなく、離職率が高まる可能性もあります。このような事態を避けるためにも、導入目的を細分化して営業の現場に落とし込みましょう。


企業全体の大きな目的には「業績向上」があります。この目的を達成するためには、新規顧客との商談を増やして受注率を上げなければいけません。受注率を上げるためには、ターゲットのセグメントを明確にしたうえで、新規顧客とのタッチポイントを優先する必要があります。


このように、導入目的を分解して現場に落とし込めば、営業担当者もSFAの導入目的や活用方法が明確になるのです。

スモールスタートを意識する

SFA導入を成功させるならスモールスタートが鉄則です。導入直後から部署全体で運用すると、混乱を招いて失敗する確率が高まります。少人数で運用しながら問題点を確認・改善し、時間をかけて運用範囲を拡大させていきましょう。


日々の入力を最小限にして定着させていくことも大切です。業務効率化が目的の場合は、毎日の日報入力だけで構いません。顧客情報一元化が目的なら、リードを獲得した時点で入力すればOKです。注力したいフェーズごとに入力内容を決め、運用が軌道に乗ってきた段階で全社的な運用に移行してもいいでしょう。

SFA導入は営業で注力したいフェーズからスモールスタートさせて段階的に運用を広げていく

営業組織は基本的に分業が進んでいないので、営業担当者が個人で抱えている業務範囲が広いという特徴があります。そのため、営業活動のすべてを可視化するには、膨大な量のデータ入力が必要です。しかし、導入直後から膨大なデータ入力を求めれば、営業担当者からの反発を招きます。

現場での使いやすさを最優先する

立場によってSFA導入によるメリットとデメリットは異なりますが、現場で活用されなければ役に立たないという大前提は忘れないようにしましょう。経営者は「導入すれば終わり」と考えがちですが、SFAは現場で運用されて初めてその効果を発揮します。そのため、経営者は「SFAの運用が定着しなければ課題は改善できない」というデメリットを理解したうえで、現場での定着促進を図らなければいけません。


管理者は、SFAに蓄積された多くのデータを活用して、新たな戦略の展開や問題点の改善を期待します。しかし、営業担当者が入力を怠ればデータそのものが集まりません。多機能なSFAは経営戦略の改善に有用ですが、現場の営業担当者に敬遠されます。

経営者、管理者、営業担当者それぞれのSFA導入することによる要望と望まないことの分類

現場の営業担当者が望んでいるのは「業務の負荷軽減」です。SFAの活用が新たな戦略開発や業績向上に役立つとわかっていても、扱いが難解なツールは定着しません。SFA活用の基盤ともいえる営業担当者が利用しなければ、すべてのプランは形骸化してコストだけがかかるという最悪の事態を招きます。


トップダウンでは定着しない

SFAの導入を成功させるためには、次の3つを組み合わせることが重要です。


最終目標は「業績の向上」なので、SFAの導入は、あくまで大きな目標達成の手段であることを営業担当者にはっきりと伝える必要はあります。しかし、トップダウンのメッセージには推進力があっても持続性がないため、導入直後はSFAの継続的な定着にはつながりにくいのです。


そこで、業績の向上は企業だけではなく、営業担当者の給与アップという形で見返りがあることもしっかりと伝えましょう。SFAを活用して売上や利益率がアップした営業担当者に対するインセンティブも組み合わせれば、定着化に拍車がかかります。

営業スタイルの変革も重要

SFAを定着させるためには、営業スタイルの変革も求められます。現行の営業スタイルにSFAの機能を適用するだけでは、業績向上につながりません。


SFAを有効活用するためには、現行の営業スタイルを抜本的に変えてSAFに合わせていく必要があるのです。現場の声だけを重視していると、ドラスティックな変化は起きません。SFAの導入目的を説明したうえで、勘や経験に頼った営業スタイルからの脱却を宣言しましょう。

業務フローを改善する

SFAの使用方法が営業担当者に一任されているような状態では、利用頻度や活用内容に差が生じます。蓄積されたデータ分析を管理者だけに任せるのも問題です。


管理者と営業担当間の考え方の相違を防ぐためには、SFA最大の特徴ともいえる「蓄積されたデータの可視化と共有」をしながらPDCAサイクルを回して、問題の解決と新たな営業活動の展開に導く必要があります。

SFA導入でPDCAサイクルを回して、問題の解決と新たな営業活動の展開に導く

実態に即した戦略を立案するためにも、既存顧客との接点がある現場の意見も取り入れながら、PDCAサイクルを回していきましょう。

導入に失敗しないSFAの選び方

SFAの機能やサポート体制はツールによってさまざまです。そのため、機能の多さや販売実績だけでツールを選ぶと高確率で導入に失敗します。SFAの導入を成功させるためには、次の5つに注目してツールを選択しましょう。


それぞれ詳しく解説していきます。

操作性を確認する

操作性を確認する

長期定着を目指すなら、機能よりも操作性を重視しましょう。営業担当者も仕事外では一般的な消費者なので、扱いにくいシステムの操作には抵抗を感じます。直感的に利用できるツールに囲まれた日常に慣れている営業担当者には、直感的でシンプルに操作できるSFAが不可欠です。


扱いにくいSFAを選択してしまうと、導入直後から利用率が低下する可能性が高くなるので注意してください。

モバイル対応は必須条件

モバイル対応は必須条件

営業担当者が消費者の立場で利用する機会の多いITツールは「スマートフォン」でしょう。そのため、SFAも一般的なスマホアプリと同じ感覚で操作できるモバイル対応タイプを選択する必要があります。


管理者向けのSFAならPC利用前提タイプでも問題ありませんが、現場重視の大企業や中小企業は、出先でも使いやすいモバイル対応型を優先して選択しましょう。

費用対効果を検討する

費用対効果を検討する

本格導入の前には、資料や見積もりを取り寄せたうえで、費用対効果を慎重に検討しましょう。高価格で多機能なSFAは実用度も高く感じますが、すべての機能を使いこなすのは難しいため、コストパフォーマンスが悪くなる可能性があります。


SFAは機能の多さだけで選ぶのではなく、「自社に必要な機能があるかどうか」を重視することが大切です。求めている機能が搭載されているなら、安価でシンプルなSFAでも十分な導入効果が期待できます。

無料試用期間の有無もチェック

無料試用期間の有無もチェック

導入に失敗しないためには、無料で使える期間を設けているツールを選択することも重要です。1か月前後の試用期間があれば、本格導入する前に疑問点を解決することができます。


モバイルに対応しているSFAも試用期間中に操作性を確認してください。直感的に使いにくいと思った場合は、導入を見送った方がいいでしょう。

サポート体制も重要

サポート体制も重要

導入後のサポートが不十分だと、定着する前に活用できなくなる恐れがあります。SFAは導入が目的ではなく、運用を定着化させて売上拡大につなげるための手段です。中長期的に運用するためにも、サポートの方法や料金を必ず確認しておきましょう。


なお、海外製のツールはサポート体制が国産とは異なるケースが多く、料金も割高になる傾向があるため、初めてSFAを導入する企業は国内ベンダーのツールを選択した方がいいでしょう。

おすすめのSFAツール2選

ここからは、大業向け・中小企業向けそれぞれのおすすめSFAを詳しくご紹介していきます。各ツールの特徴だけではなく、試用期間の有無や価格にも触れていますので、SFAツール選択時の参考にしてください。

連携機能多彩な【Dynamics 365 Sales

「Dynamics 365 Sales」 は、Microsoft社が提供するビジネスアプリケーションパッケージです。柔軟でローコードな開発が実現するため、市場やニーズの急激な変化にも柔軟に対応できます。Microsoft 365などの同社製品と簡単に同期できる拡張性の高さも魅力です。


商談結果はメールや、同社のコミュニケーションツール「Teams」で共有できるため、管理者とのスムーズな意思の疎通も実現します。顧客ニーズの多角的な分析や、AIを活用したインサイトの提供も容易です。既存ソフトと手軽に連携できる機能を重視したい大企業には、最適なSFAと言えるでしょう。


シンプルで使いやすい【Sugar Spot

Sugar Spot」は、Slim Time社の中小企業向けSFAです。シンプルな機能と優れた操作性で、費用対効果の高さを実現しています。低価格でありながらも、顧客情報や営業日報などの重要な情報をスマートフォンから活用することが可能です。進行中の案件だけをピックアップして状況を確認すれば、案件の取りこぼしもありません。


モバイル画面での操作はワンタッチで完了します。日々の定型的な入力も簡単です。訪問間隔が開いた施設の多い地域を地図上に表示することもできるため、翌日の営業ルート検討にも役立ちます。正式導入後・無料試用期間中を問わず、すべてのサポートは無料・無制限です。最低利用期間の設定もないため、初めてSFAを導入する中小企業にも適しています。


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まとめ

SFAは営業活動を強化させ、企業全体の成長へと導くツールです。しかし、SFAの選び方や導入目的を誤ると、コストだけが発生して効果が全く得られなくなる恐れもあります。


自社の導入目的を明確にしたうえで、各ツールを比較検討することも重要です。ただし、SFAの導入をゴールにしないで、導入後も定期的な運用状況の確認や問題点の改善を繰り返し、中長期的な視点で定着させていく必要があります。


SFAの導入を成功させるためにも、今回ご紹介した失敗例やおすすめのSFAを参考にしてみてください。